つくばエクスプレス(TX) 延伸計画(東京駅・茨城空港)の現状を利用者の視点で徹底解説

つくばエクスプレス(TX)は、2005年に開業後、順調に乗客を増やし、また沿線の開発が進んだことで、首都圏有数の人気路線に成長しました。

そのTXについて、宿願である東京駅までの延伸計画、そして、最近浮上してきたと茨城空港への延伸について、沿線住民・利用者の視点からその現状を徹底解説します。


■つくばエクスプレス(TX)は、当初の計画では、そもそも東京駅が起点

★東京駅が起点とされていたTX

最近、TXの東京駅までの延伸計画に関する情報をよく見聞きするようになりましたが、そもそも当初の計画では、秋葉原駅ではなく、東京駅が起点とされていました。

運輸政策審議会答申第7号(1985年7月)によるTX(当時は、常磐新線と呼ばれていました)の計画路線は以下のようなものでした。

★運輸政策審議会答申第7号によるTXの計画路線

東京(起点)
秋葉原
新浅草
元浅草
南千住
北千住
青井
六町
八潮
三郷中央
南流山
流山運動公園
流山新市街地
柏北部中央
柏北部東
守谷
伊奈谷和原
萱丸
葛城
つくば (終点)

計画路線は、東京駅を除けば、ほぼ現行のTXの路線と一致しています。

答申で、常磐新線(現TX)は東京~守谷間を第1期線(2000年までに整備すべき路線)、守谷~つくば間を第2期線(整備の方向で検討する路線)として計画されました。

計画はその後、秋葉原駅~東京駅間の工事のコストが膨大になるうえ、すでに東京駅の地下空間に余裕がない等の理由から、秋葉原駅を起点とすることに変更され、現在に至っています。

以上のような経緯から、TXの東京駅までの延伸計画という表現は正確ではないのです。
正しくは当初の計画を復活させたということになります。


■つくばエクスプレス(TX)の東京駅延伸計画の現状、臨海部~銀座への延伸構想も

★現状の東京駅延伸計画について

2016年に公開された国土交通省交通政策審議会答申198号「国際競争力の強化に資する鉄道ネットワークのプロジェクト」において、TXの東京駅延伸について言及されました。

また、答申では、以下のように東京駅延伸だけでなく、その先の都心部・臨海地域地下鉄構想の新設と常磐新線延伸の一体整備について言及しています。
※答申等の公的文書では、TXは常磐新線と表記されています。

①常磐新線(TX)の延伸(秋葉原~東京(新東京))

【意義】
・国際競争力強化の拠点であるつくば国際戦略総合特区を含む常磐新線沿線と都心とのアクセス利便性の向上。

・つくば国際戦略総合特区と新幹線のターミナルである東京駅を直接結ぶことによる研究開発拠点と圏域外との対流促進を期待。

【課題】
・高度に土地利用が進んだ都心での事業となるため、関係地方公共団体・鉄道事業者等において、導入空間にかかる事業費等を踏まえつつ事業計画の十分な検討が行われることを期待。

・東京駅における鉄道ネットワークとの乗換利便性を向上させるため、東京駅周辺の他路線との接続を考慮した駅の位置について、検討が行われることを期待。

②都心部・臨海地域地下鉄構想の新設及び同構想と常磐新線延伸の一体整備

(臨海部~銀座~東京)
・東京駅付近において常磐新線と相互直通運転を行う。

【意義】
・国際競争力強化の拠点である都心と臨海副都心とのアクセス利便性の向上。

・山手線等の混雑の緩和。
【課題】
・都心部・臨海地域地下鉄構想は事業性に課題があり、検討熟度が低く構想段階であるため、関係地方公共団体等において、事業主体を含めた事業計画について、十分な検討が行われることを期待。

・また、事業性の確保に向けて、都心部・臨海地域地下鉄構想と常磐新線延伸を一体で整備し、常磐新線との直通運転化等を含めた事業計
画について、検討が行われることを期待。

上記の答申の中で、常磐新線の延伸(秋葉原~東京(新東京))という表記から、計画では東京駅にこだわっているわけではないことが窺えます。

さらに注目されることは、常磐新線の延伸計画と都心部・臨海地域地下鉄構想の一体化に言及されていることです。

国土交通省交通政策審議会答申で過去に言及された計画は、ほぼ実現してきていることを考えると、つくばエクスプレス(TX)は将来的には東京駅どころか銀座やその先の晴海等の臨海部と直接つながる可能性が高いといえます。


■つくばエクスプレス(TX)側の東京駅延伸計画に対するスタンス

★東京駅延伸計画に引き気味?のTX

つくばエクスプレス(TX)は、公式HPで東京駅延伸計画について、以下のような立場を表明しています。

”つくばエクスプレスの東京駅延伸につきましては、平成28年4月に公表された国の交通政策審議会答申において、「国際競争力の強化に資する鉄道ネットワークのプロジェクト」として示されましたが、具体的に事業化が決定したものではありません。

事業化には様々な課題があり、国、関係自治体等とともに検討していく必要があると考えております。”

以上のように正直なところ、引き気味で、”国、関係自治体等とともに検討”と言及しているように自社だけでは無理ですよといっているようにも受け取れます。

実際、秋葉原駅~東京駅間の工事コストは膨大なものが見込まれるため、このようなスタンスになるのも無理もないと思います。

★つくばエクスプレス 中期経営計画 2018~2020年度にみる東京駅延伸計画

2018年に「つくばエクスプレス(TX)」は、”つくばエクスプレス 中期経営計画 2018~2020年度”を公表しました。

中期経営計画の中で、東京駅延伸計画に関連する交通政策審議会答申プロジェクトへの対応について、以下のように言及しています。

●「常磐新線の延伸」について

国や関係自治体等とともに検討

●「都心部・臨海地域地下鉄構想の新設及び同構想と常磐新線延伸の一体整備」について

関係自治体等における「都心部・臨海地域地下鉄構想」の検討状況について情報収集

というようにいずれも検討・情報収集レベルにとどめています。

沿線住民や関係する自治体の熱気?とは対照的に一貫して冷めた感じがします。



一方、TXの延伸計画は終点のつくば駅から先についても茨城空港への延伸という形で浮上しています。

ただ、現状では東京駅延伸計画のように国の答申で言及されているわけではありませんので、現状では茨城空港延伸構想というレベルです。

■茨城空港延伸構想の概要

★構想の概要

TXの終着駅のつくば駅から茨城県小美玉市にある茨城空港に延伸するという構想。

茨城空港は、利用者が増えているものの空港へのアクセスへが不便であることが課題で
これを解消するためにつくば駅まで延伸するというもの。

★現状

2018年に「つくばエクスプレス(TX)」の茨城空港までの延伸を目指し、空港がある小美玉市と周辺の土浦、石岡、つくば、かすみがうら、行方、鉾田の計7市議会が7日、「TX茨城空港延伸議会期成同盟会」を立ち上げ。

今後、茨城県への要望を強めていくとしています。

※茨城空港の位置

■まとめ 

以上のようにTXの東京駅延伸が実現すれば、その先の銀座・臨海部への延伸の可能性が広がります。

ただ、秋葉原~東京駅間は距離的には短いですが、地下化が必須のうえ、周辺を走る地下鉄や東京駅の既存の地下ホームとの関連で大深度地下鉄にならざるを得ません。

そうすると建設費は巨額になり、とてもTXだけでは対応できません。

ですので、東京駅延伸が実現するためには、受益団体である沿線自治体、さらにはJR東日本の協力、臨海開発の主体といえる東京都の協力が欠かせないでしょう。

いずれにしても、実現するとしても10年以上先の遠い未来になりそうです。

茨城空港の延伸については、TXまで延伸する手前にある常磐線になぜ延伸しないのかということと
延伸すれば需要が確実に見込める東京駅延伸と異なり、”そもそも採算があうのか”というようなことがハードルになりそうです。


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