東葉高速鉄道の運賃がバカ高い理由と将来の見通しについて

東葉高速鉄道の運賃がバカ高い理由と将来の見通しについて、東葉高速鉄道を開業以前の計画段階からそのいきさつを知る筆者がわかりやすく説明します。

東葉高速鉄道を利用されている方からすれば、乗客が多く、ラッシュアワーも酷いのに何でこんな高い切符代、定期代を支払わなければならないのかと不満を抱く方も多いと思います。 その秘密は、莫大な借金にあります。



東葉高速鉄道の運賃がバカ高い理由は約3,000億円に及ぶ借金が起源

結論からですが、東葉高速鉄道の運賃がバカ高い理由は、土地取得費用を含めた建設費用が計画の遅延や事故により、大幅に高騰したためです。

1996年の東葉高速鉄道開業時点で約3,000億円の債務、要するに借金を負うことになったからです。

開業から4半世紀たった現時点でも、債務は約2,500億円もあります。

それに対して、東葉高速鉄道の年間売上げに相当する営業収益は、直近の2019年度で
約165億円しかありません。

この165億円の営業収益から鉄道建設時の長期債務に係る支払利息24 億1千8百万円を負担しています。

今やルミネ等の鉄道以外の収入も多いJR東日本とは異なり、東葉高速鉄道は、収入のほぼ100%近く、運賃に頼っています。

要するに東葉高速鉄道の運賃がバカ高い理由は、未だに返済のメドがたっていない約2,500億円に及ぶ長期債務とそれに係わる利子の支払いを利用者に隣の駅に行くのに200円以上もかかる高額運賃という形で負担させているからです。

東葉高速鉄道のバカ高い運賃の将来の見通し

少子化の影響で減収が多い首都圏の鉄道会社の中で、首都圏で最も混雑率が高い東西線の沿線ということもあり、利用者は増加していて、東葉高速鉄道は、2019年度に過去最高の 159 億6千万円の営業収益を得ました。

しかし、残存債務は、その営業収益を全部返済に回したとしても完済に約20年はかかる約2,500億円となっています。

ですので、国や県等の公的機関等からの債務の大半を肩代わりする位の強力な支援がない限り、東葉高速鉄道の運賃がバカ高い状態が解消される見込みはほとんどありません。

東葉高速鉄道の主要株主は、千葉県、船橋市、八千代市、東京地下鉄、京成電鉄、東武鉄道、新京成電鉄というように私鉄といっても公的側面の強い鉄道です。

主要株主なかでも千葉県、船橋市、八千代市、そして沿線住民の増加で東西線の収益アップというの恩恵を受けている東京メトロからの債務負担等の根本的な支援が得られれば、バカ高い運賃がせいぜい高い運賃ぐらいにはなるかもしれないというのが現状です。



関係自治体の取り組み状況

もちろん、沿線自治体等は、”東葉高速鉄道のバカ高い運賃”の解消に向けて、様々な動きをしています。

東葉高速鉄道は、これまでに以下のような支援・援助を受けています。

第一次支援

平成9年度から平成18年度まで
自治体及び東京地下鉄株式会社による増資や国及び自治体による利子補給、機構による償還猶予等の支援を実施

第二次支援

平成19年度から平成28年度まで
自治体及び東京地下鉄株式会社による増資や国及び自治体による利子補給、機構による償還猶予等の支援を実施

上記で、東葉高速鉄道は、約496億円の支援を受けています。

船橋市による支援

東葉高速鉄道は、船橋市による支援を得て、令和8年度に請願駅として新駅の設置が予定されています。

この新駅は、船橋市立医療センターの移転とも関連していますので、利用客の増加に大いに資するものとして期待されています。

沿線で駅を多く抱える八千代市は、2019年1月に、千葉県、船橋市、八千代市の連名で、「東葉高速鉄道の経営安定化に向けた支援に係る要望について」という意見書を内 閣 総 理 大 臣 及び国 土 交 通 大 臣宛に提出しています。

関連自治体は、東葉高速鉄道は、低金利のため経営危機を免れているに過ぎないとの認識を共有しており、今後の金利動向によっては早期に資金ショートするおそれがあるという状況を危惧しているのが現状です。

以上から、東葉高速鉄道のバカ高い運賃の解消のメドはたっていません。




ここまで読んでいただいた方の中には、そもそも何で東葉高速鉄道の建設が遅れたのか
と疑問を抱かれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

東葉高速鉄道の建設計画のプロセスと遅延の原因

東葉高速鉄道の建設計画のプロセスと遅延の原因には3つの要因があります。

具体的には営団地下鉄(現東京メトロ)東西線、京成電鉄、成田空港問題の3つです。

営団地下鉄(以下東京メトロ)東西線の延伸計画の頓挫

そもそも現行の東葉高速鉄道は、営団地下鉄(現東京メトロ)東西線の延伸計画として構想されました。

しかし、東京メトロの目的は、基本的には東京都内の地下鉄網を充実させることにあるため、全線が千葉県内となる東葉高速鉄道の建設主体になることは不適当という結論に至りました。

このため、東葉高速鉄道の建設計画の主体が宙に浮いてしまったことが、現在のバカ高い運賃の遠因となっています。

もし、このときに東西線の延伸計画として整備・建設されていれば、約3,000億円の債務の大半は、超優良企業である東京メトロ全体で負担・返済していたはずで、隣の駅まで200円以上かかるような運賃体系にはならかなったはずです。

京成電鉄のスタンス

東葉高速鉄道は、その沿線のエリアからして、京成電鉄が何らかの形で主体もしくは、有力スポンサーとなってもおかしくない関係にありました。

しかし、東葉高速鉄道の建設計画が構想された1970年代、京成電鉄は不動産投資の失敗等で経営危機に直面していましたので、自分のことで精一杯でした。

このようなことから、千葉県の最大手の私鉄の京成電鉄の主役級の協力を得られなかったことが東葉高速鉄道の苦境に大きく影響しています。

成田空港問題が建設計画の遅延に影響

東葉高速鉄道の建設計画が大幅に遅れたのは、わずか数人の距離にして100m足らずの土地所有者が土地の買収になかなか同意しなかったからです。

そのため、開業まで3年遅れたとされています。

東葉高速鉄道のような公共交通の建設では、私権が制約を受けることになりますので、千葉県の土地収用委員会の判断で強制執行ということも可能でした。

しかし、当時の千葉県では成田空港闘争が激しく、過激派による攻撃を恐れ、成田空港の土地収用に関与した千葉県土地収用委員会は、事実上、機能停止に陥っていましたので伝家の宝刀ともいえる、強制執行を実施することができないまま時間を浪費してしまいました。

このため、直接的には関係のない成田空港問題によって、建設計画が遅延、建設コストが増え、また開業が3年遅れたことでその間、得られていたはずの営業収益を得ることができないという事態になり、現在に至る債務過多の状況が生じることになりました。

まとめ

・東葉高速鉄道の運賃がバカ高い理由は、1996年の東葉高速鉄道開業時点で約3,000億円の建設に係わる債務、要するに借金を負い、それを利用者に負担させているためです。

・国、千葉県、船橋市、八千代市、東京メトロは、東葉高速鉄道に対して、増資や利子補給、償還猶予等の支援を何度も行ってきていますが、今後の金利動向によっては東葉高速鉄道は、資金ショートするおそれがあるという状況となっています。

・東葉高速鉄道のバカ高い運賃の解消のメドはたっていません



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