北総線の運賃がバカ高い理由や背景について利用者視点でわかりやすく説明

北総線の近隣エリアに長年、住んでおり、年に数回、北総線を利用して日本橋まで行くことのある筆者は、乗るたびに運賃が安ければ、年中使うのにといつも思います。

また、大手町の大手企業に勤務する知人の半年通勤定期券に刻印された210,550円の数字を思わず凝視したものです。

そこで、北総線が北総開発鉄道という名前で計画された時点から、建設・開業のプロセスを知る筆者が北総線の運賃がバカ高い理由や背景について、利用者視点でわかりやすく説明します。




現在まで続く、北総線の運賃がバカ高くなった最大の原因は、都市計画の見込み違いにあります。

そもそも北総開発鉄道は、1966年に構想,策定されたされた千葉ニュータウンの建設計画とセットになっていました。

千葉ニュータウン建設計画

・計画人口 34万人

・計画面積約2,912ヘクタール

・エリア
千葉ニュータウン中央地区

小室地区

白井地区

西白井地区

印西牧の原地区

印旛日本医大地区

・事業主体
千葉県

ところが、1970年に造成開始した後の1974年にオイルショックが日本を直撃したことで、いわゆる狂乱物価を招き、建設コストが急騰。

早くも計画が頓挫してしまいました。
そのため、開発が大幅に遅れたことで、計画人口も見直しとなり

1986年12月に 事業計画が変更され、計画人口も17万6,000人と当初計画の約半分に
縮小されました。

そもそも北総線は、計画人口 34万人の都心への足として計画されたのにこの時点で
約半分の人口の足になりさがったのです。

この計画の見込み違い・修正が、現在まで続く北総線の運賃がバカ高い、最大の理由となっているのです。



京成電鉄北総線なら話が変わった?

北総線は、1972年に京成電鉄を中心とした京成グループによって設立されました。

現在も筆頭株主として、 京成電鉄は、過半数の 50.05%の株を保有していて、同社の連結子会社となっています。

しかし、本来は京成電鉄北総線として開発する可能性もあったはずですが、1970年に京成は不動産投資の失敗により経営難となっていたため、京成電鉄北総線として開発する体力はありませんでした。

そのため、千葉県、当時の住宅整備公団からの出資を仰ぎ、北総線は第3セクターとしてスタートすることになりました。

このときに京成電鉄北総線として計画・建設されていれば、開発に関わるコストを千葉ニュータウン住民だけに負担させることはなかったはずです。

このように北総線が京成電鉄北総線とならなかったことも現在まで続く北総線の運賃がバカ高くなった理由となっています。



成田新幹線が実現していれば状況は変わっていた?

国が成田空港の開港と同時に開通を計画していた成田新幹線は、東京駅と成田空港間を結ぶ計画で、当初は、間にひとつも駅を作らない計画でした。

しかし、途中駅を設けなければ経営的に厳しいのではという声もあり、現在の千葉ニュータウン中央駅に成田新幹線唯一の途中駅が設置される予定でした。

現在の千葉ニュータウン中央駅の周辺に広大な土地が広がっているのはこの名残です。

その後、成田新幹線が通過するだけで何のメリットもないとする反対運動が江戸川区などで高まり、結局、計画が白紙となりました。

首都圏で唯一、千葉県が新幹線が通っていない県と蔑まされている?のはこのためです。

もし、千葉ニュータウン中央駅が成田新幹線唯一の途中駅となっていれば、北総線は一躍重要な路線となり、適切な運賃で運営されていたのではないかと思います。

このように北総線、都市計画の頓挫、成田新幹線計画の白紙化に翻弄され、現在に至っているといえそうです。

北総線の運賃がバカ高い理由は、初乗り運賃にあり?

北総線は東京まで乗り入れているといっても、北総線だけでは、都心から遠く離れた京成高砂駅までしか行きません。

ですので、千葉ニュータウン住民は、京成高砂駅から先は、京成線、都営浅草線を利用して都心に向かいます。

したがって、千葉ニュータウン住民は、例えば都心の日本橋に行くためには

北総線のバカ高い運賃+京成線の運賃+これまた安くはない都営浅草線の運賃を支払うことになります。

現在は、北総線の各駅と都営地下鉄線の各駅相互間を発着し、京成線(押上~京成高砂)を通過する3線連絡となる場合、各線の定期運賃からそれぞれ5%を差し引くことになっていますが半年で約20万かかる千葉ニュータウン~日本橋間の割引額は1万円とスズメの涙?に過ぎません。

北総線の運賃がバカ高い理由は、都心まで行くのには京成線と都営浅草線の初乗り運賃をそれぞれ徴収される構造になっているからです。

都営地下鉄はともかく、同じ京成グループである京成線が大盤振る舞い?して北総線経由の利用者の運賃を3割引きくらいにすれば、だいぶ事情は変わってくると利用するたびに感じます。

現行の千葉ニュータウン~日本橋間の切符代1150円という1000円で釣りが来ない金額、結構良いランチが食べられる?金額では、選択の余地がない?沿線住民以外の利用は見込めないでしょう。

もし、これが3割引され700円くらいになれば、都心への利便性自体は高いですので沿線以外の住民が北総線、東武アーバンパークライン(野田線)と新京成電鉄の3路線の乗り換え駅になっている新鎌ヶ谷駅から流入が見込めると思うのですが。

そもそも千葉ニュータウン住民だけに有利子負債約700億円、累積赤字70億円を負担させるのは無理な話だと思います。




もちろん、沿線の自治体や住民もこうした状況を傍観しているわけではありません。

沿線自治体や住民の動き

★沿線自治体の動き

2009年に千葉県、市川市、船橋市、松戸市、鎌ヶ谷市、印西市、白井市、京成電鉄、北総鉄道の間で「北総線の運賃値下げに係る合意書」が締結されました。

合意書では、以下の事項が合意されました。

① 自治体の支援は補助金3億円/年を支出し、北総鉄道は増収分と自助努力を
併せて3億円を拠出

② 千葉県は、北総鉄道の経営の安定化・安定的輸送サービスの継続のために必
要となる支援を行う。

③ 自治体は連携し、まちづくり・賑わいの創出、若年層の地域離れの抑制、高齢
者の鉄道利用促進等の施策を講じる。

★沿線住民の動き

沿線住民を中心に”北総線の運賃値下げを実現する会”が結成され、”北総線を
 京成並みの運賃に!”をキャッチフレーズに活発に活動しています。

”北総線の運賃値下げを実現する会”は、2019年11月に報告された 2019 年度総会議案書で以下のような問題点を指摘しています。

京成グループの一員としての北総鉄道は、
①スカイライナーやアクセス特急からの線路使用料を実質受け取っていない

②千葉ニュータウン鉄道区間では運賃全額を線路使用料として支払っているだけでなく逆に運行経費などが持ち出しになっている、など親会社に対して 2 重に利益移転をしている

上記のように関係自治体や住民が様々な活動を通じて、北総線のバカ高い運賃を解消しようとしていますが根本的な解決の見通しがたっていないのが現状です。

まとめ

・北総線の運賃がバカ高くなった最大の原因は、千葉ニュータウン都市計画の見込み違いにある。

・北総線は京成グループとして出発したのに関わらず現在に至るまでそのメリットを享受していないことが北総線の運賃が高止まりしている理由となっている。

・北総線を利用して都心を出るためには京成線、都営浅草線の3線を利用しなければならないことが沿線住民の定期代・切符代の高負担の構造的な原因となっている

・北総線のバカ高い運賃を解消すべく、沿線自治体や住民が継続的に活動しているものの根本的な解消策の見通しはたっていません。




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